沙 萠 写 房 ・ 炉 辺 談


痩 せ 馬 の 話 し


 大分県にヤセウマという郷土料理があります。小麦の粉を、すこし固めに練って、親指ほどの大きさ形にしたのを、たくさん作ります。それを、まな板の上に濡れ布を敷いて、その上に列べて、その上からまた、濡れ布巾をけます。そうして、冬は暖かな所に2〜3時間くらいおきます。
 その親指型の団子を、指でおさえながら、ひっぱると、幅の広いウドンの大型のが出来ます。
 最初に粉を練るとき、時間をかけて力を入れて練ると、のばすときに幅も広く、長くのびます。こうして、のばしたウドンの親分のようなのを、味噌味の豚汁に入れたのが、大分県名物の団子汁です。
 熊本県にはダゴ汁というのがありますが、これは、練った団子をのばさないで、団子のまま入れたスイトンのようなものです。
 さてさて、大分県名物の郷土料理に、もうひとつヤセウマというのがあります。
 さきほどの、団子汁に入れたウドンの親分のようなのを、湯で茹でて、それを黄粉や小豆のあんこに、もぶして食べます。これが、大分県名物のヤセウマです。子供のころの、オヤツでした。
 なぜヤセウマと言うのか、だれも答えてくれる人は居ませんでした。語源を調べたい年齢になって、その資料を探しても、見つかりませんでした。
 ところが、ここ群馬県に移ってきて、ヤショウマつまり痩せ馬という食べ物があると聞いて、その由来を、近所の年寄りに聞いてみました。
 「小麦の粉を練って、力を入れて握ると、指の間からぐにゅ〜と出てくるだんべ。そのときの形が痩せ馬に似ているからヤセウマでヤショウマと言うんだんべ」ということでした。
 この話しを聞いて、大分県のヤセウマも、もとは、のばさないでぐにゅ〜と握って、たぎり湯のなかに放りこんで茹でていたのではないか、群馬県のヤショウマと同じではないかと、思っているのですが、はたして、どうでしょう。

【バックナンバー】

 No.1 沙萠写房の炉端からの便り
 No.2 タケノコの節の数
 No.3 タコの話−タコのけんか
 NO.4 タコの話−タコつぼの変化
 NO.5 キノコの話


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