沙 萠 写 房 ・ 炉 辺 談
韓国の堂木を訪ねてー1
 堂木(タンモク)というのは、各町や村の拠り所として信仰されている木のことで、木の種類は決まっていません。

1)韓国語は漢語だという話し

 もう15年も前のことになりますが、ある出版社から朝鮮ニンジンの撮影をたのまれて、韓国に行きました。わたしは、1才から6才まで、父親のしごとの関係で、いまのソウルに住んでいたこともありますが、その後60年以上も行っていないので、まあ初めての韓国旅行でした。

堂木で祈りの舞楽を捧げたあと、村の家々をまわって、庭で、どんじゃんがんじゃんの音楽と踊りで、家内の健康と発展を祈ります。

 韓国に行くことを決めた日から、韓国語(ハングル)の勉強をはじめました。
 はじめは、あの記号のような韓国の文字に馴染めませんでした。しかしやる気になって、その記号文字に向き合ってみると、たいへん素晴らしい文字であるのに感心しました。
 母音と子音を組み合わせて、音をつくっています。その点は、ローマ字と同じです。しかし、ローマ字は、文字をヨコに列べて音を表現しているだけですが、ハングル文字は、ヨコだけでなく、タテにも組み合わせて音を表現しています。むしろ、ローマ字より進んでいるのかも知れません。
 ま、それはともかく韓国に行くのだから、コンニチワ、アリガトウの韓国語くらい使えなくてはと、それだけは覚えて行きました。
 韓国では、「啓蒙社」という大きな出版社で、日本のNewtonという月刊誌の韓国版の監修をしている崔 夢燮(チェエ モンソブ)さんと、その出版社の写真部次長(女性)の金 東禧(キム ドンヒ)さんのお世話になりました。
 この出版社の「啓蒙社」は、ケモンサと発音します。変な読み方と思うかも知れませんが、漢和大辞典でこの啓・蒙・社の漢字をひいて、それぞれの、漢の時代、呉の時代の発音を見ると、ケモンサと発音する方が正しいということが分かると思います。今回は、その話しをしましょう。

 韓国語でコンニチワは、アンニョン・ハシムニカですが、これを、漢字で書くと「安寧ハシムニカ=安寧におすごしですか」です。 安の字そして寧の字を、漢和大辞典でひくと、漢、呉の時代の音読みが発音記号で出ています。それをみると、アン、ニョンという発音になっています。
 韓国語の語幹は、漢字を漢の時代、あるいは呉の時代の音読みしたのと同じです。ハシムニカは、古代から朝鮮で使われていた言葉で、「ひらがな言葉」とでも言うものだと思います。
 別れるときには、見送られる側と見送る側とで挨拶の言葉が、ちがっていて、安寧にお行きください。安寧にお過ごしください。ですが、小学生や、おとなでも親しいあいだでは「安寧(アンニョン)!」と挨拶を交わしています。

 「有り難うございます」は、カムサ・ハムニダ=カムサムニダですが、これは「感謝でございます」です。感そして謝という字を漢和大辞典でひくと、カム、サという音になっています。
 韓国に行って言葉が分からないときには、漢字を思い浮かべて、それを音で発音すると、何とか通じるのですが、その発音が問題です。
 「感」はkam です。カム(kamu)ではありません。kam です。この子音の発音ができないと、韓国語は話せません。いや、韓国語だけでなく、英語も話せないと思います。そんなわけで、わたしの韓国での旅は、まず「子音」の勉強から始まりました。
朝鮮ニンジンの畑
韓国北部の38度線に近い、江華島(カンファド)で撮影しました。南側を屋根で覆って、強い光線が当たるのを防いでいます。

【バックナンバー】

 No.1 沙萠写房の炉端からの便り
 No.2 タケノコの節の数
 No.3 タコの話−タコのけんか
 NO.4 タコの話−タコつぼの変化
 NO.5 キノコの話
 NO.6 痩 せ 馬 の 話 し


掲載写真と文章の無断使用はご遠慮ください。


[counter]