前橋名物 糸姫の帰郷 1931(昭和6)年12月29日

糸の町前橋を後に五千人の女工が帰郷する日(略)八間道路から十二間道路のアスファルト舗装を、踏む足音も運動會のやうに軽快だ、午前二時にはもう之が断然長蛇リズムとなつて前橋驛へ殺到する

1年の給金と土産を手にした「糸姫」の帰省風景は明治から昭和初めにかけて前橋の年末の風物詩だった。この年は清水トンネルの完成に伴い上越線が全通、記事には「去年は工場の寄宿舎で正月を迎えた(略)新潟から出稼ぎに來た彼女達にとつては嬉しい」とあった。女工の待遇は景気に大きく左右され、2年前は12月15、16日に帰省ラッシュとなった。